新制度の全体像を把握する(改定前後の違いを比較)
今回のマリオットボンヴォイアメックスプレミアム(MBA)改定は、年会費、特典条件、ポイント加算率などが大きく変わりました。まずは改定前後を一覧表で整理します。
項目 | 改定前 | 改定後 | 主な変更点・影響 |
---|---|---|---|
カードデザイン | 黒地に横ライン | マットブラック | 見た目の刷新 |
年会費(基本) | 49,500円 | 82,500円 | +33,000円、維持コスト大幅増 |
年会費(家族) | 24,750円 | 41,250円 | 同率で増額 |
ポイント加算(通常利用) | 3P/100円 | 同じ | 変化なし |
公共料金・国税等 | 1.5P/100円 | 0.5P/100円 | 大幅減、固定費決済派に不利 |
事業決済 | 3P/100円 | 対象外 | 法人・個人事業主にはマイナス |
継続特典 | 年150万円利用で1泊50,000Pまで無料宿泊 | 年400万円利用で1泊最大75,000Pまで無料宿泊 | 条件厳格化+上限引き上げ |
ダイニング特典 | なし | ポケットコンシェルジュ20%キャッシュバック | 新設、外食派に有利 |
エリート資格付与 | 年400万円利用でプラチナ | 年500万円利用でプラチナ | 条件引き上げ |
その他優待 | ラウンジ無料、手荷物宅配、保険など | 同じ | 優待は維持 |
改定の背景と意図(推察)
- 高額利用者への特化
年会費や条件を引き上げ、年間400〜500万円以上使う層に絞る戦略。 - 特典価値の維持
利用者増による特典枠逼迫を避け、価値を高めるための条件厳格化。 - 収益性の改善
公共料金や国税など低収益決済の還元率を下げ、高コスト会員を減らす。 - ブランド価値の向上
年会費8万円超で希少性とステータス性を強化、富裕層市場での存在感を高める。 - 外食市場へのアプローチ
新設のダイニング特典で、旅行と食事の両軸でプレミアム体験を提供。
年会費アップとポイント条件変更が与える現実的な影響
今回の改定で最もインパクトが大きいのは年会費の大幅アップとポイント加算条件の改悪です。
これらは単なるコスト増にとどまらず、カードのターゲット層そのものを大きく変える要因になっています。
年会費の負担増は「維持コストの壁」を高くする
- 改定前:49,500円(税込)
- 改定後:82,500円(税込)
年会費だけで+33,000円。家族カードを含めると、年間の維持コストは実質12万円超となります。
この金額を心理的に負担に感じず、かつ特典価値で上回れる層は限られます。
ポイント加算条件の改悪が中間層を切り離す
- 公共料金や国税等:1.5P → 0.5P
- 事業決済:対象外
これにより、以前は税金や事業経費で大量ポイントを稼ぎやすかった層が事実上排除されました。
つまり「生活費+旅行費だけで年間400〜500万円決済できる層」にターゲットを絞り込んだといえます。
無料宿泊特典条件の跳ね上がり
- 改定前:年間150万円利用で1泊50,000Pまで
- 改定後:年間400万円利用で1泊最大75,000Pまで
条件は約2.6倍に厳格化。
上限ポイント引き上げは高額ホテルを狙う層にとって朗報ですが、「条件を満たせない=特典ゼロ」というリスクが大きくなりました。
ターゲット年収の変化(推定)
- 改定前:世帯年収700〜1,000万円台
- 改定後:世帯年収1,200〜2,000万円以上(または高額出張族)
中間層が「お得に高級ホテル体験」というカードではなく、富裕層や法人利用可能な高額決済者のためのカードに進化(あるいは変質)したと言えます。
影響まとめ
- 年会費アップ → 年間利用額が少ない会員は即赤字化
- ポイント加算条件変更 → 税金・事業経費利用のメリット消滅
- 特典条件強化 → 年400〜500万円決済可能な層以外は継続メリット薄
- ブランド戦略 → ステータス性は高まるが、利用層は大幅に絞られる
無料宿泊特典の条件強化と活用戦略
今回の改定で最も会員の反応が大きかったのが、無料宿泊特典の条件変更です。
年150万円利用で獲得できていたものが、年400万円利用という高いハードルに引き上げられました。
条件変更のポイント
- 改定前:年間150万円利用 → 1泊50,000ポイントまで
- 改定後:年間400万円利用 → 1泊最大75,000ポイントまで
- 上限ポイントは増加、対象ホテルの幅は広がった
- ただし条件未達の場合、特典そのものがゼロになるリスク
条件を達成できる人の特徴
- 毎月33万円以上のカード利用が安定してある
- 家族や配偶者の支払いも家族カードに集約できる
- 高額な旅行や出張費をカードで決済できる
- 家のリフォームや大型家電など一括支払いの予定がある
最大化のための活用戦略
1. 高額ホテルに狙いを定める
75,000ポイントまでの宿泊枠は、国内外のラグジュアリーホテルにも届きます。
例:リッツ・カールトン東京、セントレジス大阪、JWマリオットなど。
1泊10万円を超える日程に合わせれば、年会費を一撃で回収できます。
2. オフピーク日を狙う
マリオットのポイント必要数は日によって変動します。
オフピークであれば、通常より低いポイント数で泊まれるため、特典の価値がさらに上がります。
3. ポイント追加で超高額ホテルへ
もし泊まりたいホテルが必要ポイント80,000なら、特典分(75,000)+5,000ポイントを追加して予約可能。
差額ポイントを貯めるために、日常利用やキャンペーン活用が鍵です。
4. 予約は早めに
人気ホテルや連休シーズンは特典枠が早く埋まります。
まずは仮予約を入れ、その後日程やホテルを調整して最適化するのが鉄則です。
未保有者へのアピールポイント
- 条件は厳しいが、達成できれば旅行体験の質を劇的に向上可能
- 他カードでは得られないレベルの高級ホテル滞在が実現できる
- 特典1回で年会費分以上の価値を得られる可能性が高い
新設されたダイニング特典と無料宿泊の上限拡大
今回の改定では、条件が厳しくなった一方で、新しい使い道や特典価値の拡大も加わりました。
特に注目なのが「ダイニング特典」と「無料宿泊の上限拡大」です。
ダイニング特典:外食派なら年会費回収の一助に
改定後から新設された「ポケットコンシェルジュ」経由の利用で、年間最大1万円のキャッシュバックを受けられます。
- 利用対象:有名店や話題店を含む全国の提携レストラン
- キャッシュバック率:20%
- 上限:年間1万円(利用額5万円分まで適用)
活用例
- 記念日ディナーで5万円利用 → 1万円キャッシュバック
- 出張先での高級ランチ・ディナー → 実質20%オフ感覚で利用可能
外食の頻度が高い人なら、これだけで年会費の約12%を回収できます。
無料宿泊の上限拡大:最高クラスのホテルも対象に
無料宿泊特典は、これまでの上限50,000ポイントから、最大75,000ポイントまで引き上げられました。
さらに自分の保有ポイントを追加すれば、最大90,000ポイントのホテルにも泊まれるようになります。
狙えるホテルの例(国内)
- ザ・リッツ・カールトン日光
- セントレジスホテル大阪
- JWマリオットホテル奈良
海外例
- ザ・リッツ・カールトン・モルディブ
- Wシンガポール セントーサコーブ
高額ホテルでの利用なら、1泊で年会費を大きく上回る価値が得られる可能性があります。
この2つの特典の組み合わせ効果
例えば、年間400万円利用の条件を満たした場合:
- 無料宿泊特典(90,000Pまで) → 8〜12万円相当の価値
- ダイニング特典 → 1万円キャッシュバック
- 合計で年会費82,500円を超える価値を実現可能
つまり、条件さえ達成できれば「改悪ばかり」ではなく、むしろ高額利用者にとってはメリット増となる改定です。
プラチナエリート資格条件の変更とメリット・デメリット(背景事情を含む)
今回の改定で、プラチナエリート資格の取得条件が年間400万円利用 → 500万円利用に引き上げられました。
これは単なる条件強化ではなく、会員構成やホテル現場の状況を踏まえた施策とも考えられます。
背景事情:プラチナ会員の増加と既存上級会員の不満
近年、カード発行やキャンペーンの影響でプラチナ会員以上の人数が急増。
その結果、以下のような現象が起きていました。
- ラウンジが混雑し、本来の落ち着いた雰囲気が損なわれる
- 無料アップグレードの競争が激化し、期待値が下がる
- 朝食やアメニティの在庫切れなど、サービス品質の低下
これにより、一部の長期利用者や本来の高額顧客層が「メリットが薄れた」と感じ、他ホテルチェーンへ流出する事態も発生していました。
改定の狙い
条件を厳しくすることで、プラチナ資格を得られる人数を絞り込み、
- ラウンジや特典の混雑を緩和
- アップグレード率やサービス品質を改善
- 高額利用者の満足度を優先的に確保
といった方向性を打ち出していると考えられます。
来年度以降に予想される変化
- ラウンジ利用者の減少
混雑緩和で快適度が向上し、フードやドリンクの質も改善される可能性あり。 - アップグレード競争の緩和
本当に高額利用する会員のアップグレード率が上がる見込み。 - 滞在体験の差別化
プラチナ以上とそれ以下でのサービス差がより明確になる可能性。
こうした背景を踏まえると、今回のプラチナ条件引き上げは「富裕層優遇策」であると同時に、「既存上級会員の不満解消策」としての意味合いも強いといえます。
改定後でも得する人と損する人の特徴
今回の改定は、現行会員の中でも「さらにメリットが大きくなる人」と「急に魅力が薄れる人」をはっきり分ける結果になりました。
自分がどちらのタイプに当てはまるのかを明確にすることが、継続か解約かを決める第一歩です。
改定後でも得する人
- 年間400〜500万円以上のカード利用が可能な人
生活費、旅行費、出張費をほぼすべてカード払いに集約できる層。 - 高級ホテルでの滞在を年数回以上楽しむ人
無料宿泊特典やプラチナ特典で、1泊10万円超のホテルを実質無料で体験可能。 - 外食や接待が多い人
新設されたダイニング特典(年間1万円キャッシュバック)で年会費回収の一助に。 - 長期滞在や頻繁な出張がある人
レイトチェックアウトやラウンジ利用、朝食無料などが滞在効率と快適度を向上。
損する可能性が高い人
- 年間利用額が150〜300万円程度の人
改定前は無料宿泊特典の条件を満たせたが、今後は達成が困難。 - 旅行や出張が少ない人
宿泊特典やプラチナ特典を活かせず、年会費が重くのしかかる。 - 公共料金や事業経費決済でポイントを稼いでいた人
還元率低下や事業決済対象外化で、以前のようにポイントが貯まらない。 - ラウンジやアップグレードが混雑で使いにくいと感じていた人
条件変更で改善される可能性はあるが、自分が資格を失う場合は恩恵なし。
グレーゾーンの人の判断軸
- 年間利用額が350〜400万円前後
- 宿泊は年2〜3回だが、高額ホテルを狙える計画性がある
- 外食や接待でダイニング特典を活用できる
こういった中間層は、今後1年の利用予定と特典活用計画を試算して、黒字化できるかどうかを数字で判断するのが賢明です。
継続か解約かを判断する計算とチェックリスト
改定後のマリオットボンヴォイアメックスプレミアム(MBA)は、年会費82,500円という高額カードになりました。
持ち続けるか解約するかは、感覚ではなく数字と計画で判断することが重要です。
ステップ1 年間利用額とポイント価値を計算する
- 過去1年間のカード利用額を集計
- カテゴリー別のポイント加算率を適用して獲得ポイントを算出
- 1ポイント=0.8〜1円で金額換算
- 宿泊利用時は価値が1円を超える場合もあるので別途加算
ステップ2 無料宿泊特典の有無を確認
- 年間400万円利用達成 → 75,000Pまでの無料宿泊特典(最大90,000Pまで追加可能)
- 条件未達 → 特典ゼロ
- 特典利用予定ホテルの1泊料金を調べ、金額換算する
ステップ3 優待の利用価値を加算
- ダイニング特典:利用額5万円で1万円キャッシュバック
- ラウンジ利用:1回2,000円換算×利用回数
- 手荷物宅配:1回2,500円換算×利用回数
- 朝食無料・ラウンジアクセス:滞在回数×人数×金額
ステップ4 合計して損益を判断
- 合計価値 − 年会費82,500円がプラスなら継続価値あり
- マイナスなら解約か、利用額増加・特典活用改善の余地を検討
チェックリスト(Yesが多いほど継続向き)
- 年間400万円以上利用できる
- 高額ホテルに年1回以上泊まる予定がある
- 出張や長期滞在でホテルサービスを頻繁に使う
- 外食や接待で高級レストランを利用する
- 家族カードを含めて利用額を集約できる
まとめ
このカードは改定後、万人向けではなくなりました。
しかし条件を満たせる人にとっては、年会費を大きく上回る価値を引き出せるポテンシャルがあります。
数字と予定を照らし合わせ、自分がその「恩恵を受けられる層」に入っているかを冷静に見極めましょう。
マリオットボンヴォイアメックスプレミアム 改定後FAQ
Q1. 年会費は改定後いくらになった?
A. 基本カードが82,500円(税込)、家族カードが41,250円(税込)です。改定前より33,000円(家族カードは16,500円)高くなりました。
Q2. 無料宿泊特典をもらう条件は?
A. 年間400万円以上のカード利用が必要です。上限は75,000ポイントまでで、自分の保有ポイントを足せば最大90,000ポイントのホテルに泊まれます。
Q3. プラチナエリート資格を得るには?
A. 年間500万円以上のカード利用が必要です。以前は400万円でした。条件が厳しくなった背景には、プラチナ会員増加によるラウンジ混雑やサービス低下を改善する狙いもあります。
Q4. 公共料金や税金の支払いでもポイントは貯まる?
A. 貯まりますが還元率は0.5P/100円です。以前の1.5Pから大幅減少しており、事業決済は対象外になりました。
Q5. 新しく追加された特典は?
A. 「ポケットコンシェルジュ」経由で全国の提携レストランを利用すると、利用額の20%(最大1万円)キャッシュバックされます。外食や接待が多い人には有効です。
Q6. 今から契約したほうがいい?
A. 年間400万円以上利用できる予定が確定している人や、近いうちに高級ホテル宿泊予定がある人には価値があります。それ以外の人は急がず、条件を満たせるかどうかを検討してから契約するのが安全です。
Q7. 改定後でもお得に使える人の特徴は?
A. 高額利用可能、年1〜2回以上の高級ホテル宿泊、外食頻度が高い、家族カード含め利用を集約できる人です。
Q8. 損する可能性が高い人は?
A. 年間利用額が300万円未満、旅行や出張が少ない、公共料金や事業経費決済でポイントを稼いでいた人です。